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同性婚に「世間はもう準備できている」:東海三県の連携と岐阜から見える法制度の遅れ

ゲイのみなづち(@minaduchi)です。
同性婚のニュースを見るとき、「都市部は進んでいるが、地方はまだ理解が追いついていない」と受け止めている方は少なくないと思います。
けれど2026年7月30日、愛知・岐阜・三重の三県で同性婚の法制化を求める実行委員会が、名古屋市で合同の記者会見を開きました。
この会見を報じた記事の見出しになったのが、「世間ではもう準備できている」という言葉です。
この言葉が指しているのは、自治体も企業も地域の現場も動き出しているのに、全国共通の婚姻法制だけが追いついていないという状態です。社会の全員が同性婚に賛成した、という意味ではありません。
本記事では、以下のポイントから解説します。
- 東海三県が連携して開いた合同記者会見と、三県それぞれのイベントの中身
- 岐阜県のパートナーシップ宣誓制度でできること、できないことの境界線
- 人口カバー率93.79%、賛同企業・団体708という社会基盤の広がり
- 住民票の続柄に「夫(未届)」と書く自治体の工夫と、そこにある国法の壁
- 大垣で1人から7人へ広がった歩みと、岐阜で動き始めた次の企画の現在地
同性婚に「世間ではもう準備できている」、追いついていないのは法律だけ

本記事の結論を先にお伝えすると、「世間ではもう準備できている」という言葉は、世論の完全な一致を意味するものではありません。
自治体、企業、そして地域の現場が、国の婚姻法制よりも先に進んでいる状態を指しています。
実際、パートナーシップ制度は全国人口の9割超をカバーし、婚姻の平等に賛同する企業・団体は700を超えました。東海三県では、当事者の日常を地域社会に見せる活動が県境を越えて始まっています。
しかし相続、税制、戸籍、年金といった中核的な保護は自治体の証明書からは生まれないという事実は変わりません。ここだけが、まだ全国一律には用意されていないのです。
つまり、遅れているのは地方でも社会でもなく、国の婚姻法制です。この記事では、その輪郭を岐阜という一つの県から見ていきます。
岐阜で同性婚を待つ当事者として、「準備できている」を切実な言葉として受け取った

「世間ではもう準備できている」という言葉を、僕は楽観論としてではなく、少し切実な言葉として受け取りました。岐阜に暮らすゲイの当事者として、制度の線がどこに引かれているかを確かめたことがあるからです。
同性婚の代わりに使える制度を、一つずつ読み込んだときのこと
2023年9月に岐阜県のパートナーシップ宣誓制度が始まったとき、僕は県の公式ページを何度も読み返したことがあります。
受領証があれば何ができるのか。住宅はどうか。医療機関ではどう扱われるのか。子どものことはどうなるのか。項目を一つずつ確認していきました。
読み進めるほど、県が現行法の枠の中でできる限りのことをしようとしているのが伝わってきました。同時に、書かれていない項目のほうが気になり始めたのを覚えています。
制度が整うほど、同性婚との距離がはっきり見えた
同じページのQ&Aに、宣誓しても相続権や税法上の控除、扶養義務は発生しないと書かれているのを読んだとき、僕は少し立ち止まりました。
制度が何もなければ、「制度がないから仕方ない」と考えて終わっていたと思います。
けれど、住宅や医療の項目が具体的に並んでいるからこそ、そこに書かれていないものが何なのかが、はっきり見えてしまいました。つまり制度が細かく整えられるほど、婚姻との差がどこにあるのかが見えやすくなるということでした。
その後、大垣で1人から始まったプライドマーチが3年目に7人になったという記事を読んだときも、同じことを感じました。動いている人はいる。積み重なってもいる。それでも婚姻という一点だけが動きません。
準備が進んだからこそ、最後に残された壁の輪郭が、以前よりくっきりしたのです。
同性婚の法制化を求め、東海三県が連携して名古屋で合同記者会見

ここで押さえておきたいのは、東海三県の動きが東京から持ち込まれた運動ではない、という点です。
2026年7月30日、愛知・岐阜・三重の各「結婚の平等にYES!」実行委員会が、名古屋市市政資料館で合同記者会見を開きました。会見には6人が登壇し、当事者や家族が書いた手紙と写真を組み合わせた3枚のパネルを掲げています。
会場は、法律と裁判と平等を描いた連続テレビ小説のロケ地としても使われた歴史的建造物でした。
三重・愛知・岐阜、同性婚を求める三県が異なる地域資源を持ち寄っている
「結婚の平等にYES!」は、2023年5月17日の「多様な性にYESの日」に全国10地域で始まり、2024年5月に14地域、2026年5月には全47都道府県へと広がった全国横断型のキャンペーンです。全国団体が資料や展示物、法的な解説といった基盤を提供し、企画そのものは各地域の実行委員会が担います。
愛知では、2023年7月に名古屋市内の複合施設で、同年11月には名古屋の百貨店で、カップルの日常を紹介する展示が開かれてきました。つまり東海三県の連携は、愛知で蓄積された展示と啓発のノウハウが岐阜と三重へ水平に広がったものだと見るほうが、実態に近いといえます。
そして三県のイベントは、同じ展示を三回繰り返すものではありません。
- 三重(2026年8月29日・津市):テーマは「LGBTQ+の子どもを持つ家族の想い」。展示は12時から16時、講演とトークは13時から14時40分。家族の講演、弁護士による訴訟解説に加え、地元高校の美術部の協力で作られたオリジナル婚姻届に、3組のカップルが実際に記入したものも並ぶ
- 愛知(2026年10月5日・名古屋市金山):10時から19時まで、全国47都道府県から集めた、法律上同性のカップルと家族の手紙・写真を展示。同日に非公開で結婚披露宴のデモンストレーションと企業研修も実施
- 岐阜(2026年12月・岐阜市):パネル展とトークイベントが企画されていると伝えられている。ただし2026年8月5日時点では、団体の公式サイトにも会場のイベントカレンダーにも掲載がなく、日程を含めて正式発表を待つ段階
三重は家族と地域教育、愛知は全国の手紙と企業・婚礼の実務、岐阜はこれから地元の声を集める場。この役割分担こそが「連携」の実質です。
手紙と写真が伝える、同性カップルの日常
会見で掲げられたのは、声明文ではなく、当事者や家族の直筆の手紙と写真でした。
制度の解説パネルだけでは、同性カップルが結婚できないことは抽象的な法律問題として受け取られやすくなります。
手紙は権利を要求する集団ではなく、同じ地域で暮らし、互いを気遣い、親や子と関係を築いている生活者として同性カップルを見せる装置になっています。
愛知の展示が47都道府県分を集めるのも、「同性カップルは大都市にしかいない」という思い込みを崩すためだと考えられます。
さらに愛知では、同じ日に結婚披露宴のデモンストレーションと企業向け研修が予定されています。これは法改正後の社会を先に試してみるという性格を持った構成です。啓発と婚礼の実務、企業の人事対応が一日に集約されています。
「変化が怖い」は、同性婚を先送りする理由にならない
会見と同じ2026年7月30日、この連続テレビ小説の脚本家からのメッセージが、キャンペーンを担う団体の公式アカウントで公開されました。
メッセージは「この社会には『変化を極端に嫌う人達』がいる」という一文から始まります。変化そのものへの漠然とした不安を理由に誰かを踏みつけてよいわけではない、という趣旨を述べたうえで、「一刻も早い同性婚法制化を、私は心から求めます」と結ばれていました。
これは不確実性を理由に権利の保障を先送りしてはならないという原則的な指摘だと受け止めています。作品の知名度に頼った応援ではありません。
岐阜県のパートナーシップ制度で、同性カップルにできること・できないこと

この点を端的に言えば、岐阜県の制度は関係を証明しやすくする仕組みであって、法律上の家族をつくる仕組みではありません。
岐阜県パートナーシップ宣誓制度は2023年9月1日に始まりました。性的少数者のカップルだけでなく、法律婚をしていない異性の事実婚カップルも対象としています。
同性カップルが住宅・医療・子どもの記載で関係を説明しやすくなった
まず、宣誓できる人の要件は次のように定められています。
- 少なくとも一人が県内に住んでいるか、3カ月以内に転入する予定であること
- 双方が成年に達していること
- 双方に他の配偶者やパートナーがいないこと
- 原則として近親者同士でないこと
そのうえで、県の公式ページが挙げる利用可能なサービスには、次のようなものがあります。
- 県営・市町村営住宅への入居申込み
- 医療機関での面会、緊急連絡先の指定、治療方針の説明
- 自治体ごとの行政サービス、民間事業者のサービス
- 同一生計の未成年の子について、受領証への氏名・生年月日の記載
ただし県は、医療については各医療機関に問い合わせるよう明記しています。
受領証には関係を説明しやすくする効果はあっても、最終的な扱いは医療機関や個別の事情に左右されるという限界があります。
そもそも日本では、配偶者であっても医療同意の法的な整理が明確とはいえません。実務上は配偶者や家族が優先的に扱われることが多い、というのが実情に近い説明になります。
同性婚とは違い、相続・税・戸籍は宣誓しても変わらない
県のQ&Aは、法律婚との違いをはっきり書いています。
宣誓によって相続権、税法上の控除、扶養義務といった法律上の権利義務は発生せず、戸籍や住民票の記載も変わりません。
子どもを受領証に記載できることも、保育施設への送迎や緊急時に家族関係を説明する助けにはなりますが、法律上の親子関係や親権を新たに生じさせるものではありません。
つまりこの制度は家族として説明しやすくするものであって、家族としての法的地位を与えるものではないということになります。
婚姻であれば自動的に付いてくるものが、ここでは付いてきません。
配偶者控除は、本人の合計所得金額が900万円以下で配偶者が70歳未満であれば、所得税38万円と住民税33万円を合わせた71万円の所得控除になります。ただしこの控除は法律上の配偶者に限られ、異性の事実婚のカップルも対象外です。
相続税では、配偶者の税額軽減として、1億6,000万円と法定相続分に相当する額のいずれか多い方まで非課税になる仕組みがあります。
遺族年金や健康保険の被扶養者認定も、同性カップルは原則として対象外のままです。
宣誓82件と自治体間連携が示す、同性婚を待つ間の実装段階
岐阜県の令和7年度の実施状況報告書には、宣誓件数として82件が記載されています。
さらに、転居時の手続きを簡素化する自治体間の連携について、22府県・270市町村との連携状況が報告されています。県の公式ページによれば、この数は2026年8月時点で22府県・277市町村に増えています。
これは、制度が理念の表明にとどまらず、実際に使われ、引っ越しという日常的な場面の改善にまで進んでいることを示しています。
一方で、婚姻のように全国一律・自動的に身分関係が引き継がれるわけではありません。連携はあくまで、再宣誓の手続きを軽くする仕組みです。
自治体94%・企業708、同性婚を支える社会基盤はすでに広がっている

この問題の核心は、社会の側の準備がどこまで進んだかを、具体的な数字で確認できるところにあります。
人口カバー率93.79%でも、同性婚の権利カバー率とは別物
Marriage For All Japanの集計では、2026年8月時点で全国1,788自治体のうち566自治体が何らかのパートナーシップ制度を導入し、人口カバー率は93.79%に達しています。この率は2024年1月1日時点の住民基本台帳人口をもとにした値です。
33の都道府県では、都道府県の制度または域内すべての自治体の制度によって全域がカバーされ、制度がまったく存在しない都道府県はなくなりました。
渋谷区と虹色ダイバーシティの共同調査でも、2025年5月末時点で導入自治体530、人口カバー率92.5%、登録9,836件と発表されました。その後2つの市が追加され、現在公開されている確定値は532自治体、登録9,837件となっています。
ただし人口カバー率と法的権利のカバー率はまったく別のものである点には注意が必要です。
受領証は、婚姻届のように全国の行政、裁判所、医療機関、金融機関、民間企業を一律に拘束するものではありません。
司法もこの点を指摘しています。大阪高裁は、同性カップルについてのみ婚姻とは別の制度を設けることは新たな差別を生み出す危惧があると述べ、福岡高裁と大阪高裁は代替制度では不十分だと判断しました。
「夫(未届)」証明が示す、同性カップルへの自治体の努力と国法の壁
「世間ではもう準備できている」という言葉には、自治体の側にも具体的な裏づけがあります。
三重県伊賀市は2016年4月、全国で3番目となるパートナーシップ宣誓制度を始めました。2025年4月にはファミリーシップ制度へ拡充し、実子や養子を含む家族関係も登録できるようにしています。
特徴的なのは、同性パートナーの続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」と表示する市独自の証明書を発行している点です。2025年3月の市発表の時点で、13組に受領証が交付されていました。
ただし、この証明書は住民基本台帳法に基づく住民票そのものではありません。証明書には住民基本台帳法上の住民票ではない旨が記され、他の自治体や国の機関で同じ扱いが保証されるわけでもないのです。
つまり一枚の紙の上に、家族として扱おうとする自治体の努力と、国の法律を越えられないという限界が同時に表れているということになります。
2026年8月初めには、伊賀市に暮らす同性カップルが市長に婚姻届を手渡し、市長がそれを受け取ったことも報じられました。ただしこれは、民法・戸籍法上の婚姻届が受理されて婚姻が成立したという意味ではありません。
地域の首長が結婚したいという意思を直接受け止めることと、戸籍上の婚姻が成立することの間には、国の法律という壁があります。
同性婚に賛同する企業708は「法制化後」を想定して準備を始めている
企業の側でも動きがあります。
Business for Marriage Equalityへの賛同企業・団体は、2026年7月29日時点で708に達しました。2026年6月30日には経団連会館で700到達の記者発表が行われ、約50社の担当者が集まっています。
同時に、婚姻の平等が実現した後に必要となる福利厚生、人事、社内申請、顧客対応、商品・サービス設計の見直しを、企業が自分で書き出せる記入式のツールも公表されました。
もっとも、708の賛同は、すべての会社が同性パートナーを配偶者と完全に同じ条件で扱い、システム改修まで終えているという意味ではありません。
正確に言えば法制化を支持する企業基盤と、改正後を想定した実務の検討がすでに存在しているということです。
同性婚への世論は「完全な合意」ではない、だからこそ言葉を正確に
では、世論はどうでしょうか。
2026年のイプソス調査では、日本で同性カップルに法律上の結婚を認めるべきと答えた割合は34%、結婚以外の法的承認まで認めるべきが27%、どちらも認めるべきでないが10%、わからないが29%でした。
何らかの法的承認への支持は61%、明確な反対は10%となります。一方で、わからないと答えた層が3割近くいることも見落とせません。
調査手法や設問によって数字は大きく動くため、他の調査と単純に比較することはできません。
つまり準備できているのは自治体と企業と生活の現場であり、世論はまだ動いている途中だと考えるほうが、実感にもデータにも忠実でしょう。
大垣で1人から7人へ、岐阜の同性婚をめぐる地域活動が積み重ねてきたもの

ここでのポイントは、地方の機運を参加人数だけで測ってはいけない、ということです。
同性婚をめぐる地域活動は、人数では測れない
2026年6月13日、岐阜県大垣市で第3回の大垣プライドマーチが開催されました。
主催者が1人で始めた2024年の第1回、3人だった2025年を経て、2026年の参加者は7人です。
人数だけを見れば小規模でしょう。それでも、大垣駅から商店街、市役所、大垣城公園を歩くことで、沿道の住民に地域内の当事者と支援者の存在が可視化されました。
地方では、当事者が身近にいると認識される機会そのものが多くありません。むしろ誰もが通る商店街や市役所の前を歩くこと自体が、その地域の公共空間を少しずつ変えていく行為になります。
100人規模のパレードでなければ意味がない、という基準で測れば、この歩みは見落とされてしまいます。
愛知や大阪から司法書士なども参加しており、地方の小さな活動が県外の専門職や活動者とつながる例にもなっています。
交流会が128回続いてきた、同性婚を待つ間の居場所
岐阜には、県の制度が始まる前から続いてきた活動もあります。
当事者同士の交流を続ける「レインボーぎふ」は、2026年10月に第128回、12月に第129回の集まりを予定しています。
しかし同じ地域で安心して話せる場所を長期間維持することも、地方の当事者運動を支える重要な基盤になっています。華やかな大規模イベントだけが運動ではありません。
岐阜でも、次の企画が動き始めています。日程や内容はまだ正式な発表を待つ段階ですが、突然現れた大きな運動ではなく、こうした小さな積み重ねが次の段階に入ったものとして見ることができます。
最高裁の判断を待たず、同性婚が実現した後の社会を地方が先につくっている

ここまで見てきた事実を並べると、東海三県の動きが持つ意味がはっきりしてきます。
2026年3月25日、最高裁第三小法廷は、全国5地域6件の同性婚訴訟を、裁判官15人全員で構成する大法廷に回付しました。高裁段階では6件のうち5件が違憲、1件が合憲と判断が分かれており、最高裁による統一判断が求められています。
ただし、2026年8月5日の時点で、大法廷の口頭弁論日や判決日は公表されていません。報道の見通しも「早ければ2026年度中」から「2027年にも」まで幅があり、専門家の解説では2027年初旬という見方も示されています。時期は確定していません。
それでも東海三県は、判決を待たずに動いています。三重のイベント告知も、最高裁の判断を迎える前に、地域で願いと応援を表明する企画だと位置づけています。
同じ発想は東京にもあります。2026年6月のTokyo Prideでは、最高裁の裁判官へ直筆のメッセージを届ける取り組みが行われました。
2026年には、長崎県諫早市や大村市、秋田県大仙市、鳥取、青森、京都などでも、手紙や写真のパネル展、映画上映、原告や弁護団のトーク、議員へ手紙を書く企画が行われています。東海三県の企画は、孤立した地域イベントではなく、全国に分散したキャンペーンの一部です。
理由は明快です。仮に違憲判断が出ても、その判決だけで民法や戸籍法、行政システム、企業の配偶者制度が一夜で変わるわけではありません。国会での法改正と、その後の行政・企業の実務が必要になります。
逆に、立法裁量を広く認める判断が出たとしても、自治体の制度や企業の賛同、地域の活動が不要になるわけでもありません。
日本はG7で唯一、婚姻に伴う権利を包括的に保障する制度を持たない国です。世界では約40の国と地域が同性婚を認めています。2025年には日本政府も、DV防止法や公営住宅法など33本の法令で、同性パートナーを事実婚として扱う行政運用を広げました。
しかし婚姻制度そのもの、税制、相続、年金といった中核は、依然として対象外のままです。
だからこそ、判決の内容にかかわらず必要になる準備を、地方が先に進めている。これが東海三県の連携から読み取れる構図です。
まとめ:同性婚の法制化に必要な準備は、もう地方で始まっている
「世間ではもう準備できている」という言葉は、社会が完全に一致したという宣言ではありません。婚姻法制だけが取り残されているという、現在地の報告です。
- 自治体は人口の9割超をカバーする制度をつくり、企業は708の賛同と法制化後の実務検討を進めている
- 岐阜県の制度は住宅や医療で関係を説明しやすくした一方、相続・税・戸籍・年金といった中核は動かせない
- 「夫(未届)」と書く自治体の工夫は、努力と国法の限界を一枚の紙の上で同時に示している
- 8月の三重、10月の愛知と、実際に足を運べる展示がこれから続いていく
地方は、国より遅れているだけの場所ではありません。
婚姻制度が変わらない間にも、自治体は制度をつくり、家族は手紙を書き、企業は規則を見直し、少人数でも街を歩く人がいます。
法律が追いついていないという事実は、地方に何もないという意味ではありません。けれど地方で積み重ねられてきた現実のほうが、法律より先に進んでいるという見方は、ここまでの数字とも合っています。
あなたの住む街では、いま何が始まっているでしょうか。
よくある質問(FAQ)

Q1. パートナーシップ制度がこれだけ広がったなら、同性婚はもう必要ないのでは?
A. 人口カバー率と法的権利のカバー率は別のものです。受領証は、婚姻届のように全国の行政や医療機関、企業を一律に拘束しません。相続権、配偶者控除、遺族年金、健康保険の被扶養者認定といった中核的な保護は、原則として対象外のままです。司法も、大阪高裁が同性カップルについてのみ別の制度を設けることは新たな差別を生み出す危惧があると指摘し、福岡高裁と大阪高裁は代替制度では不十分だと判断しています。
Q2. 「世間ではもう準備できている」なら、なぜ法制化されないのですか?
A. 婚姻は民法と戸籍法で定められた国の制度であり、自治体や企業がどれだけ工夫しても、そこだけは変えられないからです。2025年には政府がDV防止法や公営住宅法など33本の法令で同性パートナーを事実婚として扱う運用を広げましたが、婚姻制度そのもの、税制、相続、年金は対象外でした。6件の高裁判決のうち5件が違憲と判断し、2026年3月に最高裁大法廷へ回付されましたが、期日は公表されていません。最終的には国会での法改正が必要になります。
Q3. 岐阜のような地方で、当事者でない自分にできることはありますか?
A. 大がかりな組織や資金がなくても始められることがあります。大垣プライドマーチは1人から始まり、3年目に7人になりました。パネル展やトークイベントに足を運ぶ、地元の交流会の存在を知っておく、職場や学校でパートナーシップ制度の内容を正確に伝える。こうした行動はどれも、同性カップルが地域で暮らしていることを可視化する力になります。まずは8月29日の三重、10月5日の愛知で、実際に展示を見ることができます。岐阜の企画も、正式な発表を待っている段階です。
Q4. パートナーシップ制度と婚姻は、具体的に何が違うのですか?
A. 違いは効力の範囲と、発生する権利の二つに整理できます。婚姻は民法と戸籍法にもとづく全国一律の制度で、届出が受理されれば引っ越しても身分関係は続きます。岐阜県の宣誓制度は県の仕組みであり、他県へ移れば原則として宣誓し直すことになります。権利の面では、婚姻に自動的に伴う相続権、配偶者控除、相続税の配偶者の税額軽減、遺族年金、健康保険の被扶養者認定が、宣誓では生じません。県のQ&Aも、相続権や税法上の控除、扶養義務は発生せず、戸籍や住民票の記載も変わらないと明記しています。共通するのは、県営住宅の入居申込みや医療機関での面会など、自治体や事業者の運用で対応できる場面です。制度は関係を説明しやすくするもの、婚姻は法的な地位を与えるものだといえます。
筆者より
「世間ではもう準備できている」という言葉を最初に読んだとき、僕はうれしさよりも先に、少し胸が詰まりました。
準備できているのに、まだ結婚できない。その順番が、どうしても飲み込みにくかったからです。
けれど記事を書きながら、この言葉は嘆きではなく報告なのだと考えるようになりました。自治体も企業も地域も、もう動いている。あとは国が追いつくだけだ、という報告です。
この現実を、一人でも多くの方に知っていただけたらと思っています。
参考資料
- 朝日新聞「『世間ではもう準備できている』同性婚の法制化求め、当事者ら会見」(2026年8月4日)
- 中日新聞Web「『この地域から同性婚実現の波を起こしていきたい』法制化へ東海3県の当事者らが連携」(2026年7月30日)
- 東海テレビNEWS(2026年7月30日)
- Marriage For All Japan「結婚の平等にYES!」各実行委員会イベント告知
- Marriage For All Japan「パートナーシップ制度導入自治体」
- 特定非営利活動法人カラフルブランケッツ「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」
- 岐阜県「岐阜県パートナーシップ宣誓制度について」/「同制度に関するQ&A」/「他の自治体との広域連携」
- 岐阜県「令和7年度『清流の国ぎふ』創生総合戦略実施状況報告書」
- 伊賀市「パートナーシップ制度を拡充し、ファミリーシップ制度を導入」
- 伊賀タウン情報YOU「同性カップルに証明書 事実婚同様の続き柄表記」
- 名古屋市「連続テレビ小説『虎に翼』のロケ地となった市政資料館での企画展開催について」
- 最高裁判所「最高裁判所開廷期日情報」
- OurPlanet-TV「同性婚訴訟『最高裁で決着を』〜大法廷で統一判断へ」
- 渋谷区「全国パートナーシップ制度共同調査」
- 虹色ダイバーシティ「人口カバー率9割を突破」
- Business for Marriage Equality
- Ipsos「同性婚に対する世界の意識調査」
- g-lad xx「大垣プライドマーチ第3回パレード」
- レインボーぎふ
- PRIDE JAPAN「『結婚の平等にYES!』に新たに埼玉・愛媛・山口・宮崎が加わり14地域に」


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