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デパートで出会った15年目の同性カップル:法律上は「他人」のまま、配偶者控除も相続権もない日本の現実

デパートで出会った15年目の同性カップルを入口に、日本で同性カップルが婚姻や税・相続・年金など多くの法的保護を自動的に得られない現実を解説します。
高裁6件中5件の違憲判断と、G7で唯一包括的保護制度がない日本の現在地をデータで読み解きます。
2024年から2025年にかけて出そろった高等裁判所の判決では、6件中5件(83.3%)が「現行制度は憲法に反する」と明確に判断しました。それでも、国は動きません。
日本では、同性カップルが15年、20年、50年一緒に暮らしても、法律上は「他人」のままです。
異性婚なら結婚届を1枚提出するだけで自動的に得られる配偶者控除(年間最大71万円分の所得控除)、相続権、遺族年金といった主要な法的保護の多くが、自動的には与えられていません。
G7で唯一、国レベルで同性カップルを対象とした婚姻やシビルユニオンなどの包括的な法的保護制度が存在しない国、それが日本です。
本記事のポイント
- 高裁6件中5件が「現行制度は憲法違反」と判断
- 異性婚なら年間最大71万円分の所得控除、同性カップルには自動的には与えられない
- G7で唯一、国レベルの包括的な法的保護制度がない日本
- 2021-2025年に一定の進展はあったが、婚姻・税・相続・年金という中核は依然として対象外
記事を書いている人のプロフィール

- 僕はゲイ×強迫性障害
- ゲイを自覚して20年
- Instagramを中心に発信活動しているクリエイター
- 🌈 結婚する自由を、すべての人に。
デパートのカウンターで:15年目の記念日
「15周年なんです」
笑顔でそう告げたのは、30代後半と思しき二人の男性でした。デパートの接客カウンターで、記念日のプレゼントを選んでいます。
「おめでとうございます。素敵ですね」
店員は心からそう言いました。二人の表情には、長年連れ添ったカップル特有の、穏やかで深い信頼関係が見て取れます。
15年。
多くの異性婚カップルが、子育てに追われ、住宅ローンを組み、お互いの両親の介護を考え始める時期です。人生の重要な決断を、パートナーと共に乗り越えてきた時間。
しかし、この二人には、異性婚カップルなら当然に与えられる税・相続・社会保障といった主要な法的保護が、ほとんど与えられていません。
「もし片方が倒れたら、病院で面会できないかもしれない」
二人はそんな不安を抱えながら、日々を生きています。
【注】以上は問題を説明するためのフィクションです。以下に実際のデータを示します。
71万円の格差:異性婚と同性カップルの違い
異性婚カップルが自動的に受ける経済的な保護
| 制度 | 金額 | 要件 |
|---|---|---|
| 配偶者控除(所得税) | 最大38万円 | 税法上の要件を満たす配偶者がいる場合※ |
| 配偶者控除(住民税) | 最大33万円 | 同上 |
| 合計年間控除額 | 最大71万円 | 同上 |
| 贈与税の配偶者控除 | 2,000万円まで非課税 | 居住用不動産、一生に一度 |
| 相続税の配偶者控除 | 1億6,000万円または法定相続分まで非課税 | 死亡時に自動適用 |
※これまでの目安は「配偶者の給与収入が年103万円以下」でしたが、2025年の税制改正により、順次「年123万円以下」へと引き上げられる方向で見直しが進んでいます。
年収などの条件を満たす配偶者がいる場合、最大71万円分の所得控除を受けられます。これは、結婚届を1枚提出するだけで、自動的に得られる権利です。
同性カップルの場合
上記のすべてが、自動的には与えられません。
15年一緒に暮らしても、20年暮らしても、50年暮らしても、婚姻や税・相続・年金など、カップルとしての主要な法的保護の多くが欠けているのです。
異性婚には認められて、同性カップルには認められないもの
相続面
法定相続権:
- 配偶者は常に相続人、最低でも遺産の1/2を相続
- 子と配偶者:配偶者1/2
- 親と配偶者:配偶者2/3
- 兄弟姉妹と配偶者:配偶者3/4
- 遺留分:法定相続分の1/2に相当する遺留分が保障される
社会保障面
- 遺族年金:配偶者の死後、年金給付を受け取れる
- 健康保険の被扶養者:収入がなくても配偶者の健康保険に加入可能
医療面(実務上の優先的取扱い)
- 面会:多くの医療機関で、配偶者は「家族」として面会を認められるのが一般的
- 医療方針の決定:本人の意思確認ができない場合、配偶者などの家族が治療方針の決定に関与するのが一般的
- 病状説明:配偶者は「家族」として医師から説明を受けられるのが一般的
- 終末期医療:延命治療などの重要な判断に関与できるのが一般的
同性カップルの状況
遺言を作成すれば相続はできますが、遺留分の問題があり、相続税の配偶者控除も使えません。
医療現場では、多くの医療機関(特にICUや重症病棟)で、院内ルールとして面会を「家族・親族」に限定しているところが少なくなく、同性パートナーは何十年一緒に暮らしていても「家族」として扱われず、面会を断られるリスクがあります。
なぜか。
それは、日本が同性婚を認めていないからです。
司法は明確に答えを出している:高裁6件中5件が「違憲」
2024-2025年に出そろった判決
| 裁判所 | 判決日 | 判断 |
|---|---|---|
| 札幌高裁 | 2024年3月14日 | 違憲 |
| 東京高裁(1次) | 2024年10月30日 | 違憲 |
| 福岡高裁 | 2024年12月13日 | 違憲 |
| 名古屋高裁 | 2025年3月7日 | 違憲 |
| 大阪高裁 | 2025年3月25日 | 違憲 |
| 東京高裁(2次) | 2025年11月28日 | 合憲 ← 唯一 |
高裁6件中5件(83.3%)が「違憲」と判断しています。
東京高裁の「合憲」判決に対する反応
2025年11月28日、東京高等裁判所(東亜由美裁判長)は、高裁レベルで唯一の「合憲」判断を示しました。
原告の一人は判決後、こう語りました:
「悪夢のような判決。怒りを力に変え、最高裁では笑顔でよい判決を勝ち取りたい」
弁護団は、この判決を「性的マイノリティに対する誤解と偏見に満ちた、特異な判決」と評しています。
司法の判断と立法の動き
高裁6件中5件が違憲判断を下す中、なぜ法律は変わらないのか。
それは、司法が違憲判断を示しても、立法府(国会)が法律を改正しない限り、制度は変わらないからです。
6件すべてで上告が行われ、最高裁での統一判断が見込まれています。
早ければ2026年中に、日本の婚姻平等の行方を決める重要な判断が示される可能性があります。
G7で唯一、国レベルの包括的な法的保護制度がない日本
世界の状況
2025年時点で、約40の国・地域が同性婚を認めています(定義や集計方法により数値は変動し得る)。
アジアでは:
- 台湾(2019年施行)
- タイ(2025年1月施行)
G7の状況
- アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ:同性婚を合法化
- イタリア:同性婚は認めていないが、2016年に全国一律のシビルユニオン制度を導入(相続権、税制優遇、医療同意権などを保障)
- 日本:国レベルで同性カップルを対象とした婚姻やシビルユニオンなどの包括的な法的保護制度が存在しない ← G7で唯一
日本の世論は変わりつつある
複数の全国調査では:
- 同性婚への賛成が概ね6〜7割(全体)
- 共同通信社の2023年春(3〜4月)の調査では71%が「認める方がよい」と回答
- 18〜29歳ではおおむね8割前後(調査により9割超と出ることもある)
- 60代以上でも賛成が約半数に
若い世代ほど賛成が多く、経済界からも「多様性」「人材確保」「国際競争力」の観点から要望が出ています。
パートナーシップ制度の限界:「お願いベース」の現実
「パートナーシップ制度があるじゃないか」
そう思う方もいるかもしれません。確かに、2025年5月時点で、530自治体が導入し、人口カバー率は92.5%に達しています。9,836組のカップルが登録しています。
しかし、この制度には法的拘束力がありません。
できないこと(法的権利は付与されない)
- 相続権:法定相続人にはなれない
- 税制優遇:配偶者控除(所得税最大38万円、住民税最大33万円)なし
- 贈与税の配偶者控除:2,000万円まで非課税の特例が使えない
- 相続税の配偶者控除:1億6,000万円または法定相続分まで非課税の特例が使えない
- 社会保障:遺族年金、健康保険の被扶養者認定なし
- 医療同意:法的な同意権は認められない
- 自治体外での効力:発行自治体外では無効
パートナーシップ制度は、相続権や配偶者控除などの法律上の権利は付与されず、病院や企業に対しても法的義務はなく、あくまで善意に依存している「お願いベース」の制度なのです。
一定の前進はあった:2021-2025年の動き
最高裁による事実婚の法的保護確定(2021年)
2021年には、同性カップルについても、婚姻に準ずる「事実婚」的な関係が法的保護の対象になり得るとする判断が、最高裁の上告棄却により確定しました。
最高裁の犯罪被害者給付金判決(2024年3月)
2024年3月には、同性パートナーを殺害された遺族について、異性の事実婚と同様に犯罪被害者給付金の対象になり得ると初めて認める判決も出ています。
政府の行政運用による適用(2025年)
その後、政府は2025年にかけて、DV防止や公営住宅(賃貸)、犯罪被害者給付などに関する24本+9本、計33本の法令について、「事実婚」を定めた規定を同性カップルにも行政運用で適用するとの取りまとめを行いました。
しかし、中核部分は依然として対象外
これらは確かに前進です。しかし、婚姻制度そのものや税・相続・年金といった中核部分は依然として対象外のままです。
一定の進展はあったものの、カップルとしての主要な経済的・法的保護の多くは依然として欠けています。これが、現時点でのより正確な現状認識です。
私たち一人ひとりにできることは何か。
レベル1:まず「知る」「話す」
- この記事をきっかけに、家族や友人と一度だけこの話題を出してみる
- SNSで、この記事や判決の情報を1つだけシェアする
- 「なぜ日本だけG7で包括的な法的保護がないのか」を考えてみる
レベル2:「声」を残す
- 気になるニュース記事や団体に「応援しています」の一言を送る
- 地元の国会議員のサイトから、意見フォームでメッセージを送る
- Marriage For All Japanなどの団体のSNSをフォローする
レベル3:一緒に動く
- 婚姻平等を求める団体(Marriage For All Japanなど)のイベントや勉強会に参加する
- 署名や募金、キャンペーンに関わってみる
- 職場や学校で、LGBTQの人権について話し合う機会を作る
「とりあえずレベル1なら自分にもできるか」と感じたら、それで十分です。小さな一歩が、大きな変化につながります。
15年、20年、50年一緒に暮らしても「他人」として扱われる。そんな社会を、私たちは本当に受け入れられるでしょうか。
変化は、一人ひとりの行動から始まります。
まとめ:高裁判決が示す希望とその後
デパートのカウンターで出会った15年目のカップル。
彼らの笑顔の裏には、婚姻や税・相続・年金など、カップルとしての主要な法的保護のほとんどが欠けているという厳しい現実がありました。
しかし、希望もあります。
高裁6件中5件が「違憲」判断を示したという事実は、司法が明確に「この制度はおかしい」と言っているということです。
2021年から2025年にかけて、最高裁や政府も一定の前進を見せています。
世論も変わりつつあります。若い世代ほど賛成が多く、社会の意識は確実に進んでいます。
最高裁が統一判断を示す見通しも出ています。早ければ2026年中に、この国の婚姻平等の未来が決まる可能性があるでしょう。
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